大分市議会 平成16年第4回(12月)定例会議 一般質問書(12月5日)

-1

大分市内の個人・法人にかかわる県税の額、および県税総額の何%か?


財務部長答弁

平成14年度決算額で、県税収入額は総額で約959億円、そのうち大分市内の個人・法人にかかわる相当額は約497億円で、県税総収入額に占める割合は52%となる。

また本市が県から補助金として受け入れた額は約29億円で、市が県に対して負担金として支出した額は約17億円である。

その差し引き額12億円は大分市内の県税総収入額約497億円の2.4%に相当する。


−2

  国と大分県に対して、県から中核市である大分市への行政権限の移譲に見合うだけの財源移譲をもとめるべきでは?


財務部長答弁

 本市が県事業を受け入れるにあたっては、事業費に見合う財源もあわせて移譲するよう、県に要請するとともに、国に対しては全国市長会などを通じて、積極的に税財源の移譲を求めていく。

 中核市連絡会などにおいても常に情報を共有し、連携を更に深めていきたい。


解説(質問の背景) 

 大分県は各種の県単補助事業の見直し作業をしています。県単事業で行ってきた福祉関連補助金を、大分市には支給しない方向で検討中との、県議会での答弁もあったと報道されました。大分市は中核市になったのだから、県単補助金の支給対象にはならないとの見解のようです。

 大分県がこれまで大分市に繰り出していた補助金は、大分県民である大分市民に対しての補助金です。これをカットするということは、大分県は中核市になった大分市民は大分県民ではないと考えていることになります。したがって中核市である大分市の市民には、市民税を納める義務はあるにしても、県民税を納める義務はないということになるはずです。

 ところが実際は大分県人口の約3分の1の人口しかない大分市が、大分県全体の税収入の52%を負担しています。

 広瀬県知事は国に国から県への権限委譲に見合うだけの財源を移譲するよう申し入れています。大分市も全国の中核市とともに県から中核市への事務事業や権限の委譲に見合うだけの財源を移譲するよう大分県に申し入れるべきです。

 わたしは中核市になった以上、大分市内の県道を含めて全ての県事業を大分市に移管することには、条件付で賛成です。そしてその条件とはつまり、その分の県民税を大分市へ移譲させるということです。


−3

 高齢者対象事業費と子供対象の事業費の、それぞれの総額と大分市民の負担分は?


 財務部長答弁

 平成14年度決算ベースで、65歳以上に係る総事業費が約530億円、15歳未満に係る総事業費が約124億円、(市民負担分に相当する)一般財源でそれぞれ約79億円と約67億円です。

 平成15年予算ベースでは65歳以上事業費が、約550億円、15歳未満に係る事業費が約138億円で、一般財源ではそれぞれ約86億円と約70億円です。  


−4

予算立案のための基本的な考え方のおいて、財務部長の答弁を受けての教育長、福祉保健部長、市民部長の所見は?


教育長答弁

 教育委員会の予算はその大半が子供たちを対象にする事業費である。今後とも時代を担う子供たちに対して「基礎学力の定着」「心の教育」を2本の柱にすえ、豊かさとゆとりある教育環境作りを目指したい。


 福祉保健部長答弁

 高齢者の増加および市民ニーズの多様化、平成12年から実施している介護保険事業などにより事業費総額が増加してきた。10年後には団塊の世代が高齢者となり、いっそうの高齢社会となる。

 事業を取捨選択し、何が真に必要な福祉サービス化を見極めながら、市民ニーズのより高い事業へと振り替えるなど、財源の効率的な活用に努めていきたい。

 子供対象事業は国においても「次世代育成支援対策推進法」に基づき「行動計画策定指針」を示しており、少子化対策について国・県・市を挙げて取り組むよう定められた。

 少子化対策に取り組むことが求められているだけでなく、児童虐待やDVなど、これまで以上に対応をしていかなければならない。

現状では(子供対象に)事業費の増加は避けられないと認識している。


 市民部長答弁

 市民部では老人保健法による医療給付事務を行っている。本市としても労時医療費の適正化を図るべく保健事業に取り組んでいるが、急速な高齢化、医療技術の高度化など医療制度を取り巻く環境を考えると、今後とも事業費の増加は避けられないと認識している。


解説 (質問の背景)

 財源拡大が望めない時代に突入し、大分市においても税収を始め、市の収入の中長期見通しはネガティブであり、予算総枠の縮小は逃れることの出来ない状況です。

 予算総枠が縮小傾向にあることを強いられる以上、何度も申し上げていますように、大分市の行財政改革は、ダイエットではなくシェイプアップでなくてはならないと強調しておきます。ダイエットは良く知られているように必ずリバウンドが来ることになり、将来の大きなツケを膨らます事にもなりかねません。

 行財政改革のシェイプアップとはバリューフォーマネーの評価の裏付けに基づいて、全ての事業を見直し、事業の優先度を確認しながら、スクラップアンドビルドで新しい行政ニーズに応えていくための体制づくりをすることです。

財務部長の答弁をそれぞれの対象となる人口と比較してみますと、平成15年3月末現在で65歳以上の高齢者人口は68,694人、15歳未満の子供人口は69,801人です。

 それぞれの事業の対象人口1人あたりの総額、大分市支出額を見ますと、高齢者対象がそれぞれ、77万円、11万円、子供対象事業がそれぞれ18万、10万円となります。

事業費ベースでは高齢者対象事業は子供対象事業の実に4.3倍もの行政コストを掛けていることになります。

少子高齢化と云いながら事業費ベースでこれだけの格差がある以上、子供対象の事業については総枠を増加させる努力も必要です。

高齢者対象事業費は高齢化社会の到来とともに増加傾向を余儀なくさせられることを覚悟しなければならないのですから、特に高齢者対象予算枠の中身のスクラップ・アンド・ビルドの視点からの、厳正な再評価をしつつ、歴史的な使命を負えたもの、効果や効率に疑問の残る事業については、縮小や廃止の方向で検討しつつ新しい福祉ニーズに応えるべき財源確保をするべきと私は考えています。

−5
 大分市職員の女性管理職登用促進について、今後の年次計画をマニフェストするべきでは?

総務部長答弁

 男女の能力に優劣があるとは考えていない。
 管理職登用にあたっては、あくまでも人物本意の評価を行うことを前提とした上で、研修をはじめあらゆる機会を捉えて、昇進に対する女性職員の意識改革やパワーアップを図っていき、結果として女性管理職が増加していくことが慣用と考えている。


解説 (質問の背景) 

 この件につきましてはわたしは既に昨年第2回本会議に於いて1度質問しています。その時と本年度を比較しますと、例えば主査・係長級である4級職以上の男女比率を見ますと、4級職で一番若い職員の年齢以上の職員総数に於ける男女比率は25%と変わらないのに、4級職以上の職位にある職員の男女比は平成14年4月1日現在の実績が8%であったものが、本年4月1日現在では15%と大幅に改善されてきました。

 しかしながら課長級である6級職については同じ比較で、昨年の0.5%から本年の1.5%と三倍増であるとはいえ、男女構成比全体とのバランスにおいて、前進したとは到底云える状況ではありません。

 また今後職員の男女比率は女性の増加傾向が見られことからも、女性管理職登用促進のための何らかの施策が必要と考えます。


 −6

 来るべき大量退職期の到来を予測し、財政・人事両面の硬直を軽減し、その時期を少しでも短くするため、平成22年度程度までの期限付きで、現在の退職勧奨制度の優遇制度を大幅にレベルアップしては?


総務部長答弁

 平成19年度から10年間は毎年度約130人から180人もの退職者が見込まれている。

この間の退職手当ての市は以来額は平成14年度に比較して、各年度約20億円から35億円の増加の見込みである。

 必要財源を平準化する手段として、早期退職者優遇制度は有効な制度と思うが、財政状況も大変厳しい中、国において退職手当の支給率が引き下げられた状況を考慮すると、期限付きとはいえ、退職手当額の増額による、現行制度の大幅な拡充は困難である。


解説 (質問の背景) 

 財政担当者に聞きましたところ、大量退職者の退職一時金支払いのための財政負担と、退職者と新規採用職員の給与格差による、財政的軽減効果が相殺される年度は大体平成25年度とのことでした。つまり平成20年から5年間、大分市は大量退職者への退職一時金支払いによる財政的重圧を覚悟しなければならないと云うことです。

 その財政的な重圧を少しでも軽減し、なおかつ相殺される年度を少しでも前倒しすることは、財政の硬直化を回避するためにも重要と考えます。また大量退職期は財政硬直だけではなく、同時に管理職の人事硬直を招くことにもなる時期でもあります。



 −7

 大分市が導入している不当圧力情報の総務部長への報告義務と情報公開制度の対象を、市の職員同志や議員だけでなく、県職員にも広げるべきではないか?


総務務部長答弁

 県の職員も本市の制度における外部の者などに含まれるので、県の職員が、不正または不当な行為を行うよう、本市の職員に要請した場合は、当然、報告や公開の対象となる


解説(質問の背景)   

県も市も財政再建をしなくてはならない環境にあることは同じですが、どうしても県職員の方が市職員よりも立場が強く、従って、県職員の中には県の事業の財政節減のツケを、市町村に押しつけてくることも予想できます。撤回したとはいえ一度は緑化フェアーの赤字補填を大分市にも打診してきたことなど、その最も如実な証拠といえるでしょう。


−8市町村合併問題)

@合併が大分市にもたらす行政執行上および財政上のメリットは何か?

A特に佐賀関町の財政破綻の責任の一端を佐賀関町と共に担うべき大分県は、どのような形で責任をとり、その責任をとるという観点からどんな形で、佐賀関町に対して財政支援出動をする用意があるのか?

Bまた大分市はそのことを県に確認しあるいは要求してきたのか。

C今後、あらゆる可能性を求めて、県も合併協議の席に着くよう要求すべきでは?


企画部長答弁

@   積極的なメリットは見出しにくい。あえて言うなら、野津原町との合併では、大分川ダムとその水源地域の管理を通じて、安全な水の安定供給を確保し、ダム湖やその周辺の豊かな緑が新たな市民の憩いの場、観光資源となる。

 佐賀関町との合併では全国ブランドとなった関アジ、関サバなどの漁業資源、美しい海岸線など本物の海の自然が得られることや、大分市が名実ともに東九州の玄関口となることなどがあげられる。

 財政上のメリットとしては国、県からの財政支援措置が挙げられる。合併後15年間は普通交付税の算定の特例措置が継続され、

事業費ベースで約270億円の合併特例債、40億円の基金造成、普通交付税の上乗せ分30億円、国の補助金5.4億円、県の補助金6億円などがある。

A 県自身が厳しい財政状況にある中、県補助金の返還免除について前向きに検討し、国に対しても補助金の返還免除などを働きかけるなど様々な努力をしてもらっている。

B これまでも合併問題協議会や事務レベル協議の場、あるいは直接、県に出向くなどして、県当局の全面的な協力と特段の配慮を要請してきた。

C 今後とも課題の解決に県当局の全面的な支援が得られるよう、全力で取り組んでいく。


解説(質問の背景)

 大分県内の大分市を除く他の合併協議は全て、対等合併ですが、大分市は合併協議の申し入れに、一貫して編入合併であることを前提とするとしてきました。対等合併であればするしないは、それぞれの自治体の主体的な判断によって協議する事は当然でしょう。従って対等の合併はある意味、建設的積極的な自治体の選択と云えます。

一方、編入合併は、編入される側の自治体が自治体として維持できなくなったと認識せざるを得ないと云うことです。従って、大分市が現在協議中の編入合併は、消極的、救済的、過去の負の遺産の精算的な選択と云うことも出来ます。

救済してもらう側の自治体にしてみれば、救済されることが合併の目的ですから良いでしょうが、救済を迫られる側の大分市は、自身になんら責任のない、負債を負わされることになるのですからたまりません。

 自治体の過去の自治政策の誤り、財政上の失敗の、その自治体自身以外の誰に責任にあるかと云えば、町村の運営を指導監督する立場にあった大分県です。

であるにも関わらず、大分県は救済合併である編入合併でさえ、自治体間の自由な意志に基づく協議という姿勢を崩していません。

 国の約束する財政優遇施策はもちろん、県が検討中の救済策も、すべてが実現するという保障はどこにもないのです。 


 −9

教育長に市内にある盲学校、聾学校、養護学校、別府市にある養護学校などと大分市内の公立小中学校の交流事業を、さらに拡充することを提案するが、教育長の考えは?


教育長答弁

 交流活動に努めるよう指導している。本年度、小中学校13校で実施されている。

 今後とも交流活動の意義とこれまでの成果を踏まえ、よりいっそうの連携強化が図れるよう指導していきたい。


解説(質問の背景)

障害児教育のための専門校は多く存在し、一方で公立小中学校には障害児学級や障害児担当職員の加配制度があります。それぞれの事業・制度にはそれぞれの効果やニーズがあり、どちらも障害児教育のための必須の要素と考えます。

 しかしながら、どちらの制度を選択したにせよ、保護者にはその選択の可否についての不安が常につきまとうのもまた、自然の心理です。またそれぞれの学校に通う児童生徒達にとって、お互いの交流の機会が少ないことは、相互理解の機会そのものを制限することになり、ノーマライゼーション教育の観点から見て、非常に残念な事だと云わざるを得ません。

 お互いに助け合う合同遠足、健常児が障害児を介護しながら行う合同給食会、ハンディを考慮しながら種目を選択する合同運動会など所謂一般授業以外にも、いくらでもアイデアは膨らみます。また総合的学習の時間枠も活用できるようになりました。


 −10

@一方で職員数が過剰で、2,000万円もの血税を使ってでも、早期退職を勧奨しながら、一方で職員数が不足するとして新規に採用するという矛盾について、幼稚園教諭の任命権者である教育長の考えは?

A同じく財務部長はどのように理解しているのか?


教育長答弁

 公立幼稚園の円次数とそれに必要な教員数を推計してみると、平成16年度は9名、平成17年度は8名、平成18年度は10名の教職員の欠員が予想されている。

 加えて教職員の平均年齢は平成15年度48.9歳となっており、年度を追うごとに高齢化が進んでいる。

 こうのような状況下であるが「大分市幼稚園教育振興計画」などを勘案して、来年度2名の採用予定とした。


財務部長答弁

 職員1名の採用から定年退職までに要する人件費は概ね3億円とされている。

教育委員会としても、幼稚園教諭の採用にあたっては、平成15年度定年退職者1名、定年前早期退職者2名の計3名の退職に対し、真に必要な人員として2名を採用することとしたと受け止めている。


解説(質問の背景)

 さきほど退職勧奨制度の拡充について提案いたしましたが、退職勧奨制度はあくまで過剰人員による財政上の重圧を早期に解消することが出来ることが前提になります。

教育委員会では本年度、幼稚園教諭から2名の定年前退職者が退職勧奨優遇制度を利用しました。通常の早期退職との退職一時金の差額は2名で約2,000万以上にもなります。

幼稚園教諭に早期退職勧奨をしたということは、その方たちに幼稚園教諭にやめてもらう方が、教育委員会の過剰人員の整理になるとの判断を任命権者がしたということです。さらに、来年度からは幼稚園統廃合計画の第2期計画に入り、大分市内の公立幼稚園はもう6園減少しますので、幼稚園教諭は一時的に不足しても、すぐに過剰になることも分かっています。


 −11

@国は農業の持つ多面的な機能をどのように評価し、その機能を保全し助長するため、どの様な施策や補助事業があるのか、その内、何が大分市の農業へ貢献しているのか、あるいは貢献できると考えられるのか?

A同じく県の「農業の持つ多面的機能」の促進・支援・助長施策は?

B大分市の農政部自身はどのように評価し、大分市の農業とまちづくりや環境保全事業の中でどの程度、その多面的機能に期待し、保全し助長しようとしているのか?


 農政部長答弁

 国は「食料・農業・農村基本法」の基本理念の一つとして多面的機能の発揮を掲げ、食料の供給以外の経済効果として約8兆円の評価をしている。

 多面的機能の発揮を進める取り組みとして「田園整備事業」「地域用水環境整備事業」「中山間地域など直接支払い制度」などの各種補助事業や施策が講じられている。

 大分県は農政の基本指針の中で「誇りと活力に満ちた豊かな農村」を基本目標のひとつに掲げ、多面的機能への取り組みや支援に勤めるとしている。

このような中、本市における農業・農村の多面的機能については「水田や溜め池による国土の保全や水源の涵養機能をはじめ、様々な機能を有していると認識している。

 これらの機能は農業者だけでなく、市民全体が受益者となり将来にわたり、こうした環境が保たれるようにする必要があると考えている。

 しかしながら現状は多面的機能が発揮されなくなる傾向にあると危惧している。多面的機能の維持・確保には、脳号・農村は農業者だけのものでなく、市民共通の財産であるとの認識と理解が必要と考えている。

 今後とも生活環境整備はもとより、豊かな自然を守るための農村の維持・活性化、自然とふれあう場としての都市と農村の交流など、全市的な観点からの背策を推進する中で、農業の持つ多面的機能の維持・確保に努めていきたい。


解説(質問の背景)

 国はWTOやFTAの交渉の際「日本の農業は単に第一次産業としての食料生産手段だけではなく、環境保全機能など多面的な機能を有しており、農産品の輸入によってその多面的な機能を失うことは出来ない」と主張してきました。

 その主張そのものは日本の農業を考える場合、当然の見解です。農業が持つ多面的な機能としては、環境保全、水源涵養、緑地環境の提供、ふれあい体験農業事業のような社会教育上の効果など、いくらでも揚げる事が出来ます。

 では果たして日本の政府自身はその「農業の持つ多面的な機能」について、正確に評価し、具体的な行政施策によって支援・助長しようとしているのかと考えますと、実ははなはだ心許なくなるのです。

 私は農業そして林業・水産業こそ国の礎として考えていく必要があると考えています。

 

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